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データビジネスの今後について考えてみた

4月に入ってから各社がDMPに関係するプレスリリースラッシュとなっていて、個人的には一気にDMPを始めとするデジタルマーケティング業界が盛り上がってきている感じがあります。

各社まさに、乗るしかない!このビッグウェーブに!!状態な感じが伺えます。

少しタイミングはズレていますがFacebookもCustom Audienceという外部オーディエンスをFacebookに取り込むサービスや、Lookalike Audienceという取り込んだオーディエンスを拡張するようなサービスを提供しています。

2013年はDMP始動の年だ、という予言がまさに実現に近づきつつあるのでしょうか?

そして、先日、このDMPラッシュの集大成とも言えそうな大変濃密かつ重厚な対談記事が出ました。この記事、めちゃくちゃおもしろい。DSP/DMPの本を書き、業界関係者必読ブログを書いてらっしゃるような、まさに業界のトップとも言える人が、先進的な事を発信し続けているのは大変素晴らしいし、ワクワクするなぁと思っています。

なのですが。。。やはり今の流れでは、本当の意味でのデータビジネスは広がりにくいのかなぁと考えています。とはいえ、明確にこうだ、というのがあるわけではなく、なんとなくモヤモヤしている状態です。 先日、同僚であるところの@ritouさんと話していて少し腹落ちできた部分もあるので、つらつらと書いてみます。

はじめに

僕は、いわゆるIdentity系と言われる、広告業界の方から見ると声が大きいと感じてしまう人たちと関わることもあれば、広告のお仕事をする機会も多いです。広告系の方は炎上が起きるかもしれないことを「なんとなく」恐れていますし、一方でIdentity系の人は「なんとなく」広告系は好きじゃない(はっきりとした理由があることも多いです)、という構図ができています。

それぞれの「なんとなく」を明確にするために、私見ですが考え方をまとめてみました。

広告系の人たち

  • もちろんプライバシーや個人情報にはしっかり配慮したい
  • が、実際にその辺の線引がよく分からない。明確なルールがない
  • 個人に紐づくID的なものをマスクしていれば個人情報にあたらないよね?だからその範囲で使えるデータはどんどん使っていきたい
  • アドテク/デジタルマーケティングの時代が来る。もっとデータを使ったビジネスを展開していきたい
  • でも、炎上は怖い。そして、Identity系の人には何かやるとすぐ怒られて一気に炎上しちゃうイメージ

Identity系の人たち

  • 個人の情報は個人の意思で適切に管理されるべき
  • データ保持者の同意のもと、同意した範囲の情報が他システムに適切なルールで提供されるのは問題ない
  • 適切なルールと仕組みのもとであれば、むしろそういったデータ連携の動きは積極的に進めてもいいのではないか
  • 広告系の人が何をやっているのかよく分からない

溝は深そうですね

双方の考えは真逆です。ただ、0か1かという議論は建設的ではなく、その間の落とし所を真剣に考えるべきなんじゃないかと思うのです。

まず、データの第三者提供に関しては、法律的な問題はクリアしているとしても、個人の感情的な部分はクリアされていない場合が多いと思います。例えば、ユーザーが同意したとしてもそれが本当に理解した上での同意なのか?、データの収集はどこまで行われているのか?、集めたデータをどう使われているのか? etc…です。

この問題は個人の信条などにも関わってくるので、万人が納得するような答えはないと思いますが、最低限「どんなデータを収集していて」、「どのようにデータを使っている/どのようなデータを流通させているのか」をユーザーにわかりやすい形で明示するのが必要と思います。プライバシーポリシーを読めば分かる、といえばそうかもしれないのですが、大半の人はプライバシーポリシーからデータに関して思いを馳せる、なんてことはしなさそうです。

落とし所を仕組み化する

前置きが長くなりましたが、次のようなデータ収集/提供の仕組みであれば比較的納得感があるのではないでしょうか? ここで言うDMPとは、ファーストパーティの情報を扱うだけでなく、サードパーティへのデータ提供、サードパーティからのデータ取得も扱うことを前提とした広義のDMPになります。 妄想している機能としては以下のものです。(本当は図に落とした方がいいのですが、眠いしうまく絵にできる気がしない。。。)

  • これまで通りCookieSyncなりなんなりでIDを交換してシステム間で連携
    • あとはお互いのプライバシーポリシーや利用規約に反しない範囲で適切にデータを交換します
  • (New)DMPはユーザーに収集している情報を提示するサービスを提供します
    • 具体的には、来訪したユーザーに対して「当システムにおけるID○○のあなたについては、我々は今こんなデータを保有しています」「ID○○さんに関して保有しているデータは、このような形式で第三者に提供しています」というのを可視化するサービスです
    • ユーザーはその情報を見た上で、そのように情報を収集してほしくない/情報を第三者に提供してほしくない(オプトアウト)ということを選べます
    • さらにユーザーが望めば、より精緻な情報を取得/精緻な形で情報を第三者に提供(オプトイン)を行えます。その場合は、ユーザーには何らかのメリットを与える必要があるでしょう。例えばポイントなど。
    • ただし、大半のユーザーはオプトインもオプトアウトも選ばない可能性が高いので、デフォルトでは、一定レベル以上のの匿名化/統計化した情報を第三者に提供する、という形にします

ユーザーにデータの取得/流通についてのコントロール権を与えつつ、最低限のレベルではデータ活用/流通を行える気がします。また、望むユーザーに関しては自分のデータを対価にすることでより詳細な情報の活用/提供が可能になります。DMPはシステムの後ろにいるのではなく、積極的に前に出てくることも必要なのではないでしょうか。

類似したポイントサービスはすでに多く存在すると思いますが、どんなデータが取られていて、どの粒度でデータ提供されているのか、を明示しているサービスはないと思います。このスキームがうまくいくなら、場合によっては望んだユーザーの購買履歴や決済情報などのよりクリティカルな流通させることができるかもしれませんね。それはそれでまた別の問題も発生してきそうですが。。。

まとめ

なんとなく問題意識として持っていることに関してつらつらと書いただけなのですが

  • 法律的には大丈夫かもしれないが、感情的な部分をケアするようなものが仕組みに含まれいたほうがいい
  • もっとデータ活用している企業は前に出て来た方がいい
  • アーキテクチャや制度も含めて、もっといろんなところを巻き込んで議論していった方がいい

というのを痛烈に感じています。よく分からないしきキモいし怖い、という論調が大きくなりデータ活用が盛り上がらないのが一番悲しいですね。

今の営業的というかマーケティング的な方面ドリブンでデータを活用していってやろうというのもすごく重要なのですが、割と重要なところを議論せずにどんどん進んでいる気がしてなりません。もちろん、真剣に議論していくとなかなか大変そうですが、その中から現状を突き破るようなデータビジネスのイノベーションがあるような気がしています。

とはいえ、この文章も半分勢いで書いているのでうまく言いたいことが言えてない気がしますし、自分自身まだまだ考えが足りてないところだらけなので、たっぷり議論したいですね。twitterFacebookで適当に声をかけてもらえるとうれしいです。

余談

ここまで書いてきて、ああ、これって前に行った勉強会で聞いて考えたことの続きだなーと思いました。